夏の暑い日には急に雨が降ってくる

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市内を流れる烏川にかかる橋はいくつもあります。橋をゆっくりと渡っていきますと、それぞれの橋からの景観は、四季折々目を楽しませてくれます。残念なことには、その景観を眺めるための空間が、どの橋にもありません。しかたがないのですが、橋のなかほどに休憩する空間があったらと、思います。詩人の飯島耕一がアルチュール・ランボーの故郷、ベルギーの国境に近いフランスの地方都市シャルルヴィルとメジュールの境を流れるムーズ川の橋の上で、「シャルルヴィルの町を歩きまわって、そのなんとも退屈で殺風景な市街の印象は『これは高崎だな』」と語ったことを、詩人の渋沢孝輔が「ランボーの現象」という文章の中で書いています。


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このフランスの地方都市の橋上からの景観を眺めながら、高崎を想起させたのは、若くして亡くなった仏文学者橋本一明の故郷が高崎だからです。橋本は畏友原口統三の遺稿集『二十歳のエチュード』をまとめ、恩師鈴木信太郎をして、日本のランボーの研究第一人者と言わしめた人です。また、日活映画のギャング映画の脚本をてがけた人でもあります。和田橋の上で立ち止まり、ぽんやりと上流の風景を眺めていますと、青春のある時、わけもなくランボーと橋本の幻影を追って佇んだ、ムーズ川の風見が思い出されます。